埼玉県坂戸市にある聖天宮には、全部で5000頭の龍が舞っていますが、たったひとりの台湾人の思いが、多くの巧を動かし造り上げられたものです。
埼玉県でよく見かける、竹やぶを切り開いた土地を、のんびりした風景をクルマで走っていると、突然、周りの風景に馴染まない、ビビッドカラーの建物が目に飛び込んでくる場所に遭遇しました。
「一体これは何だ?」と、度肝を抜かれるような外観の聖天宮に立ち寄ってみました。
異国情緒たっぷり!ビビッドカラーの聖天宮
▲鼓楼や鐘楼から観ることができる本殿屋根の装飾
豪華絢爛な造りは、異国にある宮殿を想像させます。「黄色い瓦と龍」は、神様と皇帝の建物にしか使われないと言われています。
▲境内案内図
聖天宮の由来は、建て主が若くして不治の病を患い、ご本尊「三清道祖」と縁起により完治できたことが始まりです。
三清道祖への感謝の念から、誰でも神様のご利益をえられるお宮を造りたいと考えていたところ、生まれ故郷の台湾ではなく、日本の坂戸の地にお宮を建てるようにお告げがあったそうです。雑木林以外、何もない土地をイチから切り開き、台湾のお宮として「聖天宮」が建てられました。
聖天宮には5000頭の龍が舞っている
▲天門の上にある龍の装飾
聖天宮には、5000頭以上も龍がいると言われているのですが、さすがに全てを見つけるのは至難の業です。
▲屋根の下にある装飾
聖天宮の天門と呼ばれる入口門の装飾は、屋根の下にある「万物を象徴する彫像物」の数の多さも、拝観する前から驚かされます。
埼玉にいることを忘れてしまう雰囲気がロケ地として人気
▲ロケ地にも使われる前庭と前殿
横浜にも神戸にも、これほどの大規模な建造物は無く、道教寺院としては日本最大級を誇ります。
▲前殿と鐘楼
古代中国の三大宗教の一つである道教は、日本人にとってあまり馴染みが無い反面、神秘性もあり、台湾旅行の魅力にもなっています、聖天宮は日本で一番近い「台湾」とも言われています。
敷地面積もさることながら、装飾は一級品のため、西遊記のドラマ、仮面ライダー、○○レンジャーのような戦隊モノ、「EXILE・ATSUSHIのPV」ロケ地にも使用されている場所です。鼓楼と鐘楼を、左右に備える前殿の前庭は、綺麗な石が敷き詰められたうえに、とても広く、ロケ地として人気があることが一目でわかります。
台湾テイストがエキゾチック!ついつい時間が過ぎるのを忘れてしまう
▲前殿にある5mもの1本石柱と4mもの1枚石板にある彫刻
たくさんある見どころのなかで、前殿にある「5mもの1本石柱」と「4mもの1枚石板」に彫られた彫刻は見応えがあります。
▲透かし彫りされた「九龍柱」
台湾の観音山で取れる高さ5mの観音石の1本石柱を、台湾から呼び寄せた1流宮大工が彫った「九龍柱」があります。「九龍柱」は、鳳凰や麒麟などの神使いのなかで最も強い龍と、永久の「久」という縁起の良い9の数字を、1つの彫刻に施したものです。
建物も装飾も手抜きの無い、良いシゴトしていますねぇ~。エキゾチックな台湾テイストの、ガラスとタイルで造られた屋根飾りを前にして、しばしば時間を忘れてしまいます。
さらに台湾テイストの凄さを増す前殿
道教は、いろいろな神様が存在する多神教ですが、神や仙人に到達することを目的にする「神仙思想」と、老子や荘子などの思想家が「道」を説いた「老荘思想」の2つの面を持ち合わせています。
2面性を持つ経緯から「陰陽」や「八卦」が生れ、現在の「風水」や「占術」に影響を与えていると言われています。
▲「聖籤(しんしゃむ)」
前殿には、日本のおみくじとは全く違う、「聖籤」と呼ばれる台湾流のおみくじがあります。おみくじの番号を引くだけでなく、その番号で良いかどうかを、一対の陰陽を表す「神杯」を投げて神様に伺います。
神様のお許しが出なければ、何度でもやり直さなければならず、日常的に占うのが特徴です。引いたおみくじは持ち帰って、毎日の生活に役立たせるユニークなものです。
▲前殿の天井
前殿の天井は、10000以上の部品を釘なしで組まれている天井になっています。アート作品のような見応えのある芸術品です。
知る人ぞ知る聖天宮のなかにあるパワースポット見つけた!
▲鼓楼(ころう)
前殿に並び立つように、本殿に向かって左側(西)にある鼓楼は、階段で上がって眺望を楽しむことができます。鼓楼にある陰鼓(いんこ)の下で赤い蝋燭(ろうそく)に火を灯して、幸福や良縁を授かる場所でもあります。恋愛成就にご利益があるということでしょう。
陰鼓は、自動で午後3時に12回鳴るようになっています。
▲鐘楼(しょうろう)
本殿に向かって右側(東)にある鐘楼は、階段で上がって眺望を楽しむことができます。鐘楼にある陽鐘(ようしょう)の下で赤いハチマキのような布に、実現させたい思いを、言葉を書いてぶら下げて、強い気を授かる場所でもあります。どうしても、成し遂げたいことがある人向けの場所のようです。
陽鐘は、自動で午後3時に12回鳴るようになっています。
鐘楼から観る前殿の屋根装飾です。細部にまで金細工されているのがわかります。孔雀の装飾を、目の前で見ることのできる場所です。
埼玉にいながら別世界にいる錯覚を起こす本殿へ
▲豪華絢爛な回廊
前殿から本殿までは、宮殿の中庭を囲むような回廊から、段々と見えてくる世界が変わってきます。壁には、様々な神様の絵などが描かれています。
▲本殿
黄金のキンピカに光る灯籠もあり、豪華絢爛な光景を観ていると、埼玉にいながら別世界にいる錯覚を起こしてしまいます。
本殿の黄色い屋根に、SNS映えする龍の舞いを観ることができます。
▲本殿前にある九龍網(きゅうりゅうもう)
九龍網という見事な石彫刻は、1枚岩から台湾の彫刻士が彫ったもので、台湾では縁起の良い9の数字を使って9頭の龍が彫られています。中央の龍は、右手には力の象徴と言われている「龍玉」を持ち、左手には神の威令を表すと言われている「旗ぼう」を持っています。
龍の爪にも意味があり、5本の爪を持っている龍は最強と言われています。
香台の下にキョンシーマークを発見!第1作目から30年経ちましたが、懐かしいテンテンの「幽玄道士」の映画を観て以来の、キョンシーマークを目にすることができました。
聖天宮には、透かし彫りされた石柱が全部で8本ありますが、そのうち4本が本殿にあります。
聖天宮でハイハイしましょう!
前殿より更にパワーアップしている本殿の内装は、隙間がないぐらい細かく画が描かれていて天井にも装飾が施されています。
天井には10000点以上の楠木で出来た彫刻に金箔を施して、釘を使わずにらせん状に組まれている細工には驚きです。
▲本殿の「四大天王」
ご本尊の三清道祖は撮影禁止ですが(ちょっとだけ写り込んでしまっていますが・・・)、東西南北を守る青竜・白虎・朱雀・玄武の「四大天王」は、撮影OKを頂きました。日本には無い色使いなど、仏像マニアにはたまらないエリアです。
▲本殿から観た前殿
本殿内にボランティアの係員が常駐しているので、台湾式の参拝方法、簡単な聖天宮の由来や彫刻などの解説を聞くことができます。
日本では「参拝」すると言いますが、台湾では「拝拝」と言うそうですから、聖天宮では「ハイハイ」しましょう。
▲鼓楼から観た前庭越しの天門
ご本尊は最高位のため、お願いごとはいくつでもして良いそうです。聖天宮のなかで台湾の人々の熱い思いに、少しだけ触れることができました。時間が許せばまだまだ観ていたいのですが、予定外に立ち寄ったので、次回の楽しみにしたいと思います。
異国情緒たっぷりな聖天宮で、日本の寺社仏閣では見たことも無い、うずを巻く組み木造りや色使い、風習に触れることができて、新鮮な気持ちになりました。
▲ドラゴンボールの神龍(シェンロン)イラスト
アニメ好きとしては、たくさんの龍がいる聖天宮で「出でよシェンロン!」と叫んでみれば、ドラゴンボールの神龍(シェンロン)が出てきそうな雰囲気さえあります。これもパワースポット巡りの醍醐味のひとつかもしれませんね。
この記事を書いた人
ライター MAKIJI
マニアックな旅行ライター。ジブリアニメが好きすぎてトトロの森のある街で「観光コンシェルジュ」として活動中。見過ごしがちでマニアックなスポットや、都市伝説のある場所を彷徨って、妄想しながら「ひとりっぷ」している。